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  • 機械試験

    熱処理技術講座 >> 「熱処理のやさしい話」

    第23章 機械試験

    機械試験

    機械試験は主として金属材料の機械的性質を求める試験で、静的試験(引張り試験、曲げ試験、ねじり試験、硬さ試験、クリープ試験)と動的試験(衝撃試験、疲労試験、摩耗試験)があります。ここでは硬さ試験以外の試験について簡単に解説しましょう。引張り試験(JISZ2241)

    引張り試験は試験片を徐々に引張り、降伏点又は耐力、引張り強さ、伸び、絞りのすべて又は一部を測定します。この引張り試験は機械的性質を求める最も重要な試験です。荷重を試験片の断面に均一に作用させ、破断に至るまでに十分に変形を生じさせることができ、その結果から他の試験における性質を定性的に推定できます。

    (1)曲げ試験
    (JISZ2248)

    曲げ試験には、鋳鉄のようなもろい材料の曲げに対する抵抗力を測定する抗折試験と、材料の変形能を判断する曲げ試験の2つがあります。ここでは変形能を測定する曲げ試験について解説します。JISではほとんどの圧延鋼材、鍛鋼品、可鍛鋳鉄などについて曲げ試験を行うよう規定をしています。試験片には1~5号試験片が規定され、どの試験片を用いるかは材料の規格によります。試験は試験片を規定された内側半径まで曲げた後、わん曲部の外側にクラックその他の欠陥が生じたか否かによって合否を判定します。

    (2)ねじり試験

    ねじり試験は、丸棒や円筒状の試験片又は部品にねじりモーメントを加え、強さ、変形、破壊などねじりに対する抵抗力を求めます。つまり、せん断弾性係数やせん断の降伏点、ねじり強さ、ねじり応力とせん断ひずみとの関係など、せん断に対する性質を知ることができます。

    (3)衝撃試験
    (JISZ2242)

    試験片に衝撃力を加え、これに要したエネルギーの大きさから材料のじん性を求める試験です。試験機には試験片の形状からシャルピー衝撃試験機とアイゾット衝撃試験機がありますが、アイゾットは試験片の固定が確実であると云う長所はありますが、高温や低温試験には適さないため、最近では余り使用されていません。シャルピー衝撃試験は、破断に要した吸収エネルギー(J)を切欠き部の原断面積で割った値で算出します。
    シャルピー衝撃値(φ)J/cm2=吸収エネルギー/切欠き部の原断面積

    (4)疲労試験
    (JISZ2273)

    材料に弾性限度内の低い応力を繰返し加えると、引張り強さよりもはるかに小さい応力で破壊します。この現象を疲労あるいは疲労破壊と呼んでいます。疲労試験はこのように材料の繰返し応力に対する疲労強さを求める試験です。加える負荷応力の種類によって曲げ、引張り-圧縮、ねじり、また、ねじりと曲げの組合せなどがあります。試験方法は、試験片に負荷荷重を加え、破壊するまで繰返します。鉄鋼材料の場合、107回の繰返しで破壊しなかった応力を持って疲労限度とします。この疲労限度が機械設計には重要な役目を果たすのです。

  • 傷探傷法

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    第24章 傷探傷法

    (1)浸透探傷試験
    (JISZ2343)

    表面の割れ、き裂などの欠陥を浸透液と現像液を用いて検出する試験で、けい光浸透探傷法と染色浸透探傷法とがあります。いずれの場合も操作は簡単です。まず、試験片の表面に付着している油や汚れを除去し、清浄で乾燥した状態にします。ついで、試験すべき部分の全表面を浸透液槽に浸すか、スプレーやはけで浸透液を塗布します。10~30分間濡らし浸透液を十分に欠陥部に浸透させた後、付着している液を十分に洗浄液で取り除きます。この面に現像液をむら無く塗り、これを剥がすと薄い膜ができます。割れなどの欠陥があれば毛細管現象によって、浸透液が内部から吸い出され着色しますので容易に判断ができます。

    (2)磁粉探傷試験
    (JISG0565)

    この試験方法も浸透探傷法と同様、表面欠陥の検出用です。試験片を磁化させた後、これに磁粉を吸着させ表面の傷や割れを検出する方法です。したがって、非磁性な18-8ステンレス鋼、高Mn鋼などは適用できません。磁化方法には色々なものがありますが、いずれの場合も傷や欠陥と直角方向に磁化させる必要があります。通常は電磁気で試験片を磁化させ、残留磁気によって欠陥部に磁粉を吸着させます。小物部品では永久磁石の極間に試験片を置いて磁化させ、鉄粉をまいて検出することもあります。また、大型部品では磁化させながら鉄粉を付着させ欠陥を検出します。

    (3)超音波探傷法
    (JISZ2344)

    超音波を被検面に当てて、その減衰状態あるいは反射波形を観察することによって、内部の欠陥の大きさや位置を検出する方法です。一般には反射波形法が用いられますが、試験条件は被検体の大きさ、形状、欠陥の方向、種類などによって異なるため、適宜設定する必要があります。また、超音波の透過は試験片の結晶粒度や熱処理による硬さの相違によって、影響されますので判定には十分注意をして下さい。